▼学芸発表会といえば小学校の一大行事である。子や孫の活躍を毎年楽しみにしている、またはしていた、という人も多いのでないか。演劇や合唱、展示。幼い出来だが一生懸命さが胸を打つ。「子がわれかわれが子なのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る」(河野裕子)。そんな赤ん坊だった子が舞台で立派に役を務めている。子どもにとっても親御さんらにとっても成長を実感する機会だろう。
▼子どもたちが練習に励んだ成果を見ることができるのはうれしい。ところが、相当な練習を積んだのだろうと想像はできても、どこか気持ちの悪さが拭えない発表会もある。つい最近も目にした。北朝鮮の第7回朝鮮労働党大会と祝賀行事の大パレードがそれだ。大会は36年ぶりに開かれたという。金正恩氏の党委員長就任を発表し、偶像化をさらに進めるのが狙いだったらしい。見え透いた筋立てで、小学生には悪いが拙い演劇をやゆする「まるで学芸会」の言葉がぴったりだった。
▼金委員長は今回、核保有国であることを殊更強調した。交渉に使えるカードは、もはや核兵器のみと考えてのことだろう。「わらをもつかむ」とはこのことだが非常に危険だ。折しもオバマ米大統領の広島訪問が決まった。計ったのかどうか金委員長の「核武装」カードに対し、「核なき世界」と「日米関係深化」カードで切り返した格好になる。つまり相手にせずだ。手前勝手な筋書きではそっぽを向かれるだけ。発表会には国際社会が拍手喝采するような台本を用意した方がいい。