童話『クマのプーさん』を書いたA・A・ミルンは、警察の訪問を受けた日のことをエッセイに記している。突然だったがいずれ逮捕される日が来るとは思っていたそうだ
▼自分は悪い事をしたように見えやすいと自覚していたからである。自意識過剰な人なのかもしれない。「メロドラマの主人公は劇のどこかで不当告訴に遭うことになっている」とも述べていた。実は窓の閉め忘れを指摘に来ただけだったのだが。さてこの人は悪い事をしたようには見えないものの、いんぎん無礼な態度が少々あだになったか。佐川宣寿前理財局長のことである。いわゆる「森友文書」書き換え疑惑の主人公としておととい、国会の証人喚問に呼ばれた。本人としては不当だと考えているのでないか
▼もっともこちらは心揺さぶられるメロドラマでなく、演技がまるでかみ合わない茶番劇といったところ。佐川氏が「刑事訴追の恐れがあるためお答えできません」と言えば、野党が「疑惑は深まった」と息巻く。話にならない。ともあれ、もういいかげんにしてほしい。この1年の国会の機能不全は目に余る。「森友」にせよ「加計」にせよ、野党は一地方の民事案件を安倍首相の首を取れるとばかりに政治利用して大騒ぎ。国内の深刻な課題や目まぐるしく動く国際情勢には頬かむりだ
▼安倍政権にもおかしな点はあろう。だからといって政治を停滞させていては重要案件が全く前に進まない。国会議員は与野党とも大いに反省すべきである。もうすぐ年度替わり。国の新年度予算もきのう成立した。そろそろ潮時だろう。