▼ぐずぐずと肌寒い日が続くと思っていたら、今週から急に夏めいてきた。家から見える手稲山の緑も、日ごと頂上に向け勢力を拡大しているようだ。暖かい陽気に万物の命が輝き育つ。きょうから旧暦二十四節気の小満である。「夏めくや水田の水の匂ひして」(植木孝雄)。道内各地では田植えも本格化するころだろう。水田がどこまでも続く風景は、日本が「豊葦原瑞穂国」であることを思い出させる。
▼ちょうどいい季節である。本道でというわけにはいかないが、先進7カ国(G7)の首脳たちも「瑞穂国」の豊かな水田風景を目にする機会があるのでないか。26、27の両日、三重県で開かれる伊勢志摩サミットまで1週間を切った。2008年7月の北海道洞爺湖サミットから8年ぶりの日本開催である。最大のテーマは、減速する世界経済を再び成長軌道に乗せること。安倍首相は財政出動を含む提案を用意していると聞くが、各国首脳の足並みはそれほどそろっていないようだ。
▼テロ対策、北朝鮮問題、防災。議題は山積みである。風光明媚(めいび)な開催地だけに各国首脳も景色を堪能できればいいが、そんな暇はあるのかどうか。ただ、伊勢神宮訪問は日程にあるそうだ。政教分離原則があるため参拝はしないものの、日本の文化について理解するには良い機会だろう。日本の文化といえば和歌もその一つ。ぜひ覚えて帰ってほしい一首がある。「集めては国の光となりやせむわが窓照らす夜半の蛍は」(長慶院)。G7で集めた英知を、必ず世界の光に。