この時期になると、家庭菜園が気になってうずうずしている人も多いだろう。良い種や苗が手に入るだろうか、土の状態は―。出来は支度次第なだけに最初が肝心だ
▼チェコの作家カレル・チャペックも『園芸家12カ月』(中公文庫)にこう書いている。「未来は芽の姿でわたしたちといっしょにいる。いま、わたしたちといっしょにいないものは、将来もいない。芽が私たちに見えないのは、土の下にあるからだ」。種が健やかに過ごせる環境が土の中にあり、十分に栄養を得られて初めて発芽する。土づくりをおろそかにしては元気な芽など出ないし、未来もほほ笑まないというわけ
▼まちづくりも同じでないか。国土交通省が27日発表した公示地価を見て、そんなことを考えさせられた。住宅地と商業地、どちらも上昇率全国1位が倶知安町だったからである。今や押しも押されもせぬ訪日外国人のメッカ、ニセコ地区を擁する本道の一大観光拠点だが、恵まれた自然と運だけでここまで来れたわけではない。ニセコを愛する人々が丹精込めて育ててきた結果なのである。筆者も40年近く前からスキーや登山で訪れているが、そのころから居心地の良い喫茶店や民宿が幾つもあった。当時決して条件は良くなかったはず。それでも「土作り」を始めている人はいたのである
▼この滋養豊かな土があったからこそオーストラリア人ら訪日外国人も芽を出すことができたのだろう。未来にこれだけ大きな実を付ける営みが過去あった事実を知ると、地域にほれ込む人がいることの大切さを思わずにはいられない。