▼いまや世界に知られるウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)だが設立間もない1889年当時は薄っぺらで、大して読むところもなかったらしい。同紙を育てた人々を描いた『ウォールストリートジャーナル』(講談社)で知った。読者は「その日のできごとを編集なしで逐一だらだらと書いた記事につきあう」しかなかったようだ。情報に飢えた人にとってはそんな新聞でも貴重だったのだろう。
▼米国はゴールドラッシュ景気に沸き、投機が活発化していたのだ。そこに目を付けたのがWSJ創業者の一人チャールズ・ダウで、今につながる「ダウ平均株価」を発表して新聞を躍進させたのである。どこの世界にも目先の利く人物はいるということだろう。そのダウ平均ができてからこの5月で120年になるそうだ。構成銘柄は時代に合わせ入れ替わっているものの、一貫して経済の実勢を示す指標であり続けてきた。日本で同様のものを探せば日経平均株価ということになる。
▼伊勢志摩サミットが財政出動と金融政策、構造改革の国際版「3本の矢」を進める首脳宣言を採択して閉幕した。株式市場も一定の評価をしたようだ。日経平均はきのう終値で前日より62円高い1万6834円を付けた。3日続伸である。安倍首相は今頃ホッとしているだろう。経済中心の会議後に株価下落では面目丸つぶれだ。首相は早速、財政出動に意欲を見せているというから、ゴールドラッシュとはいかなくとも、ダウに倣って経済躍進の糸口くらいは見つけられないものか。