司法取引

2016年05月31日 08時59分

 ▼米国の犯罪映画には必ずこんな場面がある。被告人「俺が一人でやった。誰の指図も受けてない」。検察官「黒幕はもう分かっている。ただ証拠がない。証言してくれれば君は早く刑務所から出てこられるし、その後の身の安全も保障する」。被告人は同席する弁護士の助言も得て「それなら…」。お決まりの展開である。初めて見たときは、米国では不正な取り調べが横行していると義憤を感じたものだ。

 ▼司法取引というのが裁判での正式な制度だと知ってからも、違和感は消えない。同じ思いを抱いている人は案外多いのでないか。犯罪事実よりも駆け引きが重視されるのかと。ところがその司法取引が2年以内に、日本でも始まることになりそうだ。衆院本会議で先週、刑事司法改革関連法が成立し、取り調べの録音・録画の義務化とともに、法制化されたのである。取り調べを可視化すると、人間関係を基にした供述が得にくくなるため、捜査の新たな武器として導入されたらしい。

 ▼つまり可視化により「かつ丼でも食うか。故郷の母親も泣いてるぞ」式のなだめすかしがやりにくくなるため、「刑を減免するから」といった取り引き条件を捜査過程で提示できるようにするわけである。まさか安易な取り引きに頼るばかりで、丁寧な捜査をなおざりにすることはないと思うが、犯罪も捜査も人間のすること。刑罰が軽減されるとなれば犯罪者は正直にもなればうそもつく。映画ならまだしも現実で義憤を感じさせる判例が生じないか。法の執行者は心すべきだろう。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • オノデラ
  • 北海道水替事業協同組合
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,482)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,376)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,201)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,084)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (878)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。