大事な試験を控え勉強に本腰を入れねばならないのに、だらだらと先延ばしにした揚げ句直前になって慌てて一夜漬け―。ほめられたことではないが、ほとんどの人が身に覚えのあることだろう
▼試験に限ったことではない。ダイエットや禁煙も同じである。この一箱を吸い終わったら本気出して始めるぞ。きょう目いっぱいケーキを食べたらあしたからは頑張れる。かくしてあしたはあさってになり、さらにまた…。ところで米国の行動経済学者ダン・アリエリー教授は、課題提出を先延ばしする学生にはいつも感心させられるそうだ。それは「遅れたわけを説明するために、つくり話や言いわけや家族の不幸をでっちあげる創造性を持ちあわせているから」(『予想どおりに不合理』早川書房)。もちろん皮肉である
▼日本の人口減対策もまた、おしなべて先延ばしの感が強い。しかも言い訳が次から次と出てくる。いわく、財政不足で予算を回せない、高齢化の進行が速すぎる、子どもは工場生産品とは違う。国立社会保障・人口問題研究所が先頃、深刻な推計を公表した。日本の総人口は2045年に15年比16.3%減の1億642万人となり、7割を超える市区町村で2割以上人口が減るというのだ。本道はさらに勢いが急で25.6%減の400万人。3分の2以上の市区町村が5000人未満に陥るとのこと
▼対策を先延ばしにした将来の姿である。もう猶予はない。少子高齢化の歯止め、地域の立て直し、デフレ脱却。創造性は言い訳のためでなく、効果ある具体策を実行するためにこそ使いたい。