▼詩人で画家の星野富弘さんの「花の詩画展」がことし7月、19年ぶりに札幌市内で開かれる。星野さんの名前を知らないまま、その作品に触れている人も少なくないはず。というのも日本自動車連盟(JAF)に加入していれば毎月届く情報誌「ジャフメイト」に、「風の詩」と題する詩画が連載されているからである。表紙を開けてみれば「ああこれか」と気付くだろう。ちなみに6月号の絵は矢車草だ。
▼ご存じない人もいると思うが、星野さんには首から下の運動機能がない。中学校教諭だった24歳の時、部活動指導中に事故で頸髄(けいずい)を損傷したのである。絶望から脱し、わずかに動く口に筆をくわえて文や絵を描き始めるまで2年かかったという。「ジャフメイト」4月号にはレンギョウの黄色い花の絵にこんな詩が添えてあった。「わたしは傷を持っている でもその傷のところから あなたのやさしさがしみてくる」。温かい言葉の中にハッと気付かされるものがある。
▼花の詩画集『鈴の鳴る道』(偕成社)にも印象深い一文があった。クチナシの白い花の上にこう書かれている。「鏡に映る顔を見ながら 思った もう悪口をいうのはやめよう 私の口から出たことばを いちばん近くで聞くのは 私の耳なのだから」。今月初めにヘイトスピーチ解消法が施行されたが、その対象となっている人たちにもぜひ熟読玩味をお薦めしたい。「花の詩画展」は大丸藤井セントラルで来月5日から17日まで。会場では自分に向けられた詩画を見つけてほしい。