子どもは宝物を見つける天才である。道端でキラキラ光る金属の破片を拾ったり、林の中でチャンバラにぴったりの枝を発見したり
▼ヤンソンの『たのしいムーミン一家』(講談社文庫)にも、海岸で宝探しを楽しむこんなシーンが出てくる。「みんなは、どんなものが流れついているかと、てんでにさがしにかかりました。これは、このうえもなくおもしろい仕事でした。とてもおかしなものが見つかるからです」。台湾の小学生が先月27日、海岸で見つけた海藻と貝殻にびっしり覆われた物も、一見何だか分からない「とてもおかしなもの」だった。貝などをはがしてみると正体は防水ケースに入ったカメラ。長らく海に漬かっていたはずだが、どこも壊れていなかったそうだ
▼ニュースでご覧になった人もいよう。ここからの展開が素敵なのである。大切な思い出を返してあげたい―。そう考えた児童と担任教師は、中の画像とともに経緯をフェイスブックに投稿。その日のうちに持ち主が見つかったという。それは東京都在住の女子大生。石垣島でスキューバダイビングをしている際に、誤って流してしまったのだとか。驚いたことに2年半前の事らしい。海流は真っすぐ台湾に向かっていないというが、どこをどう運ばれたものか最終的に200㌔離れた優しい子どもたちの足元に漂着したのである
▼女子大生の思い出が詰まった宝物が海で発見されて子どもたちの宝物になり、そこから温かな交流の宝物が生まれた。宝物がどんどん増えていく。ムーミン谷でもこんな不思議な話はめったにあるまい。