▼バーチャルリアリティ(VR、仮想現実)技術に詳しい同僚に先日、最新機器を体験させてもらったのだが、その臨場感に少なからず圧倒された。大きなスキーゴーグルのような装置を着けて目の前の映像を見ると、自分が別の世界のただ中にいるようなのである。高い所に立てば目がくらむし、物が飛んで来ればよけずにはいられない。頭をぐるりとめぐらすと風景は360度切れ目なくつながっていた。
▼そんな仮想現実を体験できるVR装置も安価になり、だいぶ普及してきたらしい。昨今は「仮想」がはやっているようだ。他にも仮想通貨や仮想アイドルといった言葉もよく耳にする。それぞれビットコイン、初音ミクが有名だが、当方のように「かそう」と聞いてまず「仮装」が思い浮かぶ頭ではなかなか理解も追い付かない。ところが最近は「仮想発電所」なるものまで出てきていよいよ戸惑っている。電気は力を発生させる実体的なエネルギー。それがなぜ「仮想」になるのか。
▼なんでも電力網上に散在する太陽光や風力発電、蓄電池をIoT(モノのインターネット)で統合し、需要制御とも組み合わせて一つの発電所のように機能させるそうだ。多様な電源で必要な分だけ電気を作り、急に発電量が減れば需要側の使用を抑えるなどして調整するわけ。出力を細かく増減できないのが現在の発電所の悩みだが、この仕組みなら将来は電気も量販店並みの在庫管理を実現できるかもしれない。大きなビジネスチャンスも生まれよう。仮想で終わらなければだが。