賃貸マンションリフォームのハプティック(本社・東京)は、入居者が自由にリノベーションパーツを選べる「カスタマイズ賃貸」の道内展開を始めた。施工前の築古物件への入居申込者は、費用負担ゼロで好みの部屋づくりが可能。物件オーナーはリノベーションにより付加価値をプラスすることで、空室解消や家賃下落を防止できる。
同社は2009年に創業。中古物件の施主をターゲットに、低コストでデザイン性の高いパッケージリノベーションを提供している。東京、大阪など主要都市圏を中心にこれまで約3000件の施工実績があり、月平均で60件を手掛けている。
低コストの理由は、自社での設計・施工と、グループ内仲介会社による入居者付けまでのワンストップ体制にある。キッチンや洗面台などの内装デザインを規格化し、設計や資材コストを抑えることで改修費用を定額化した。
独自に仕入れた無垢(むく)材フローリングなど飽きにくいシンプルさが人気を集め、空室解消だけでなく、平均12%の賃料アップ効果も創出。入居前の内装イメージが明確なため、工事完了前の入居申し込みは6割に上るという。
一方、カスタマイズ賃貸は、改修後の空室問題を考慮し、入居予定者の確保後に1部屋単位で工事できるのが特長。リノベーションパッケージに合わせ、床材や壁紙、スポット照明などのパーツを費用負担なしで、自由に選べる点が入居者への大きなアピールポイントだ。契約件数は全国で100件を突破した。
道内第1号のカスタマイズ賃貸物件は、豊平区平岸にある築39年の中古マンション。全45戸のうち約2割の空室を抱え、オーナーから依頼を受けて導入した。
入居予定者は20代後半の夫婦。和室2部屋の3DKは1DKに変更し、家具に合わせて選んだ無垢材のフローリングを敷き詰めた。使い勝手の悪い押し入れと玄関脇の納戸を思い切ってつぶし、土間とウォークインクローゼットに作り替えるなど、ライフスタイルに合わせた快適な部屋に仕上げた。
施工費290万円はオーナーが拠出した。当初の見積もりを超えた分は、入居者が家賃に上乗せして負担。発注から工事完了までの期間は約2カ月だった。
8、9日に開いた内覧会にはマンションオーナーをはじめ、管理会社や不動産会社など約100人が足を運んだ。見学者からは、タイヤや防災備蓄の置き場になる広い土間、温かみのある無垢材が好評だったという。
同社リノベーション事業部営業担当の板沢祐輔さんは「一等地だけでなく、一・五等地の場所でも入居者さんを増やすことができる」と説明。「札幌の市場も供給過多だと聞く。古いマンションが増える中で、あと20年生かせるようなリフォームを手伝えれば」と話している。