▼英国の伝説的ロックバンド「ザ・ビートルズ」が初来日してから、きょうでちょうど50年になるそうだ。法被を着て飛行機のタラップを降りてくる映像をご記憶の人もいよう。「ラブ・ミー・ドゥ」「レット・イット・ビー」「イエスタデイ」。ファンでなくともいつの間にか多くの曲を覚えている。伝説と呼ばれるゆえんだろう。活動していたのが1960年代の10年ほどだったというのが信じられない。
▼日本と同様、英国で当時ビートルズに熱狂した世代も今や中高年である。今回のEUをめぐる国民投票で離脱派が多かったのもその中高年だったそうだ。古き良き英国よ再び、ということらしい。一つの欧州に将来の可能性を見る若者とは好対照だったと聞く。もしかすると中高年の頭の中では「マジカル・ミステリー・ツアー」の曲が鳴り響いていたのかもしれない。下手な訳はお許し願いたいがこんな詞である。「おいでよミステリー・ツアーに/欲しいものは全部ここにあるよ」
▼ところが勝ったはずの離脱派の間で早くも失望が広がっているとのこと。あるはずのものが実はなかったのである。離脱を呼び掛けた政治家たちが相次いで前言を翻しているのだとか。例えば「離脱で浮いた負担金を国民保険に」は「言った覚えがない」、「移民を抑制できる」は「ある程度という話だ」という具合。政治家はいずこも同じ。参院選が迫る日本も人ごとでない。ともあれ今、そんな離脱派が口ずさむのはたぶん「イエスタデイ」。「ああ、きのうまでは良かったのに」