▼ある人が楽観的なのか悲観的なのかを判断する実験として、水が半分入ったコップを見せる方法はよく知られている。「まだ半分ある」と喜んだ人は楽観的、「もう半分しかない」とがっかりした人は悲観的というわけ。お遊びみたいなものだが、単純なだけに妙にふに落ちる。もっとも、中身と気分によっても見方は随分変わるだろう。人間ドックのバリウムなら間違いなく「まだ半分も」とげんなりだ。
▼こちらも、人によって見方は大きく分かれるかもしれない。自営業者や農業者が支払う国民年金保険料の2015年度納付率が、63.4%だったというのである。厚生労働省が6月30日に発表した。個別の事情もあろうから、当事者にしてみれば特に不思議のない数字なのかもしれぬ。ただ脱水症状で苦しんでいるのに、コップに6割強の水しかたまらないようなもの。毎月給与明細を眺め、疎にして漏らさぬ天引きにため息をついている人にとっては何とも割り切れない話でないか。
▼年齢別の納付率も興味深い。最高はゴール間近の55から59歳で74.9%。最低は25から29歳の53.5%だった。若者の年金不信が理由の一つだろう。地域にも特徴がある。上位3県は島根、富山、新潟で総じて日本海側の納付率が高い。最下位は沖縄の44.5%で極端に低かった。短期の損益で一喜一憂すべきでないが、15年度の公的年金積立金の運用成績に5兆円を超える損失が出たとも伝えられたばかり。コップの底に穴まで開いているのでは、楽観的でいるのもなかなか難しい。