小学生の時、冬になると学校ではクラスごとに回り番を決め、大きな石炭庫までストーブ用の石炭を取りに行ったものだった。1960年代のことである
▼家も同様で、秋の終わりには物置に一冬分の石炭が運び込まれた。地域によって違いはあろう。筆者は空知地方出身のため石炭が身近な資源だったのである。照明やテレビは電気、煮炊きはガス、暖房は石炭。それが当時の家庭の一般的なエネルギー構成だった。資源エネルギー庁によると、家庭での消費割合は65年の電気23%、ガス27%、灯油15%、石炭35%から2011年の電気51%、ガス30%、灯油18%、太陽光等1%、石炭0%へと大きく様変わりしている。電気依存度が高まっているのは多くの人の実感するところだろう
▼家庭に限らない。現代はあまねく電気仕掛けの世の中である。それ故将来にわたって電気の安定確保は極めて重要。経済産業省の有識者会議が10日まとめた50年までの長期的エネルギー戦略提言案はその道筋を示すものだった。提言の柱は太陽光や風力など再生可能エネルギーの主力電源化。脱原発依存や温室効果ガス削減を実現するにはそれしかないらしい。ところが15年の電力量は再エネが全体の5%足らず。主力のLNG44%、石炭32%には遠く及ばない
▼さて、あと30年あまりで主力と呼べる2桁割合を確保するだけの技術革新と制度改善を期待できるかどうか。何とか主力電源に引き上げられたとしても、電気代が驚くほど跳ね上がってしまうなら、石炭を物置から運び出す時代に逆戻りしたくなるかもしれない。