▼詩人河井酔茗に「ゆづり葉」の一編がある。木の葉の新旧交代を世の中に例え、子どもたちにその流れを優しく教えるものだ。「子供たちよ/これは譲り葉の木です/この譲り葉は/新しい葉が出来ると/入れ代つてふるい葉が落ちてしまふ」と語り始め、都会や書物などいずれ「凡てのものがお前たちに譲られるのです」と諭す。今回、18、19歳の若者たちに譲られたのは選挙権だったということだろう。
▼新しい有権者は譲られたものを手に何を思ったのか。取りあえず投票してみた人もいれば、慣れないものに戸惑っているうち一日が終わってしまった人もいよう。はなから興味がないからと無視を決め込む人がいてもおかしくない。各党と候補者をしっかり研究してから投票した人はそう多くないのでは。もっとも有権者全体でもそんな人は奇特な部類に入るだろうが。若者たちにしてみれば勝手に期待され、投票率が低いからとまた勝手に失望されるのは納得いかないかもしれない。
▼第24回参院選の結果はもうご存じの通り自民121議席、公明25議席で与党の圧勝。自公とも改選前を上回り、非改選と合わせて参院の半数を制した。対立軸を示したはずの民進は、本道で底力を見せつけたが全国では改選前議席に届かなかった。野党で気を吐いたのは、おおさか維新と共産くらいか。政治という「ゆづり葉」が若者たちに受け入れられていないのなら問題だが、多分そうではない。若者たちにはどの政党も枯れ葉に見えているだけだろう。それもまた深刻な話だが。