▼巨大ヒーローが活躍する特撮テレビ番組『ウルトラマン』(TBS系)の第一回放送が1966年7月17日だったそうだから、あすでちょうど50年である。怪獣とウルトラマンの戦いに胸を熱くしていたかつての少年たちも、今や還暦前後だろう。当時、ヒーローが巨大化するテレビドラマは世界で初めてだったらしい。特撮技術や演出を一から考えねばならなかったというから、作る方は大変だったろう。
▼とはいえ見ている方も、次々と襲来して破壊の限りを尽くす怪獣にハラハラしているのだからある意味楽ではない。中でも記憶に残る怪獣はと問われて、「バルタン星人」と答える人はかなり多いのでないか。『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」に登場するセミの顔とザリガニの手を持つ知性の高い怪獣である。ファンならこのバルタン星人が難民だったことを覚えているかもしれない。母星が爆発してしまったため新たな星を探しに出て、その途中で地球を見つけたのである。
▼バルタン星人は帰る星がない。科学特捜隊はまず対話を、一方の地球防衛軍は即時攻撃を提案する。この話、何だか最近の欧州の移民受け入れ派と排斥派の議論に似ていないか。国連難民高等弁務官事務所は6月、難民ら家を追われた人が2015年末で過去最高の6530万人に上ったと発表していた。人道問題を超えて欧州の安定を大きく揺るがせている。ウルトラマンは侵略者となったバルタン星人を倒すしかなかったが、50年後の今、世界はもっと優れた解決策を持てるはず。