医療技術が発達していなかった江戸時代までは、年端もいかぬ子どもが病気やけがで死亡する例も多かった。「7歳までは神のうち」の言葉が生まれたのはそうした背景があったためらしい
▼この世にいるようでいて、あの世にもまだ籍を置いている。そんな状態だと考えられていたのだろう。当時、子どもをあの世に連れ去る怖い病気と恐れられていたものの一つが高熱と全身の発疹が特徴のはしか(麻疹)である。はしかは本来、自然に治り一生免疫がつく病気だが、栄養や衛生が行き届かなかった昔は命取りになることもあったのだ。現在は就学前に行う2回の予防接種でほぼ封じ込めに成功し、2015年には世界保健機関からいわゆる土着系の麻疹ウイルスは存在しないと認定された
▼ところが、である。そのはしかが今、沖縄で猛威を振るっているという。先月末からきのうまでに70人以上の患者が確認されているそうだ。県も「感染が疑われる人はすぐに受診を」と異例の呼び掛けに乗り出している。台湾からの観光客がウイルスを保有していたという。国立感染症研究所によると、この男性が感染性のある期間中に広く県内を移動したことで二次感染が拡大した。はしかが激減したため日本ではワクチンを1回しか接種しない人が増えていることも災いしたようだ
▼まれとはいえ死亡例があり妊婦なら胎児への影響も大きい。既に愛知で沖縄由来とみられる患者も見つかっている。黄金週間も近い。全国に感染を広げないために、沖縄旅行に出掛ける人は念のため水着とともに接種履歴の確認も。