▼ことわざに「三人旅の一人乞食」がある。3人で何かをしようとすると、その中の1人がどうしてか貧乏くじを引いたり、仲間外れになったりすることを教えるものだ。こうした例えは日本に限らず世界中にあるようで、ケニアには「二人なら友達、三人はいさかい」、英国にも「二人なら仲間、三人ではご破算」といったことわざがあるそうだ。言語や文化は違えど人として共通するものがあるのだろう。
▼つい最近、そのことわざを思い出させるようなニュースに触れた。24日に開かれた日中韓外相会談である。あらわになったのは日韓の関係改善と中国の孤立だった。3人で旅をしていて、連れの1人にあまり協調性がないため、あとの2人が少し距離を置いて歩くことにしたわけだ。何も意地悪で仲間外れにしたわけではない。日中間は尖閣諸島周辺の領海への中国公船侵入で緊張状態にあり、中韓間は最新鋭のミサイル防衛システムをめぐるあつれきで隙間風が吹いているのである。
▼とはいえ、昨年は抗日戦勝70年の名目で中韓が足並みをそろえ、日本は一人蚊帳の外に置かれていた。またかつて日中の経済連携がうまくいっている時代は、両国とも韓国を眼中に入れていなかった。どうやらアジアの東に位置するこの3国は、「三人旅」のことわざのわなに落ちているらしい。ただ意見交換の機会は今後も大切にすべきだろう。これも「三人」もののことわざだが、いつか「文殊の知恵」が湧き出てこないとも限らない。まあ、だいぶ先のことにはなるのだろうが。