▼誰もが一度は経験があるのではないか。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」のことである。怖いと思うとただのススキさえお化けに見えてしまう。星新一の短編SFにも「夜の会話」の話があった。男がハイウエーを走っているとき宇宙人に会うのだが、話しているうちにそれは思念の産物だったと判明するのである。「怖いもの見たさ」とも言う。見たい気持ちが募ると「それ」は目の前に現れるものらしい。
▼なぜそんなことを考えたかといえば、海外のあるニュースに触れたからである。米国のCNNが8月30日、ウェブで伝えたのだが、ロシアの天体望遠鏡が地球から約94光年離れた恒星系から発信されたとみられる「非常に強い信号」を捉えたというのだ。もし人工的な信号なら人類を超える技術を持った文明が発したことになるという。この広い宇宙のどこか、地球以外の星に知的生命体が存在する可能性が出てきたのである。天文ファンならずとも大いに胸躍るニュースではないか。
▼こうなると続報が待ち遠しい。それがもたらされたのはこの1日。意外と早かった。再びCNNが伝えたが、ざっくり言うとこういうことである。謎の信号は地球外生命体が発信したものでなく、おそらく地球に由来するものらしい…。旧ソ連時代にも、同国軍事衛星の信号を同様に検知した例があったそう。何のことはない、地球外生命体を熱望するあまり、正体不明の信号に、すわメッセージかと早合点したわけ。やれやれ科学が進む現代、枯れ尾花の正体は幽霊に限らぬようだ。