▼ビジネスを成功させるには、行き当たりばったり進むより、まず仮説を立ててから始める方が良いと聞いたことがある。0から1や2を作ることは難しいが、1を修正して2にすることは比較的容易だからだという。仮の答えを携え、あっちにぶつかり、こっちにつまずきしながら本当の答えに迫っていくのである。風呂に入っただけで新発見できた古代ギリシャの天才もいたが、凡人には望むべくもない。
▼仮説の手法はビジネスにとどまらない。日常生活から国際交渉まで幅広く応用できる。ところが、それが全く通用しないのが北朝鮮の動きである。今度は日本の排他的経済水域に、3発のミサイルを相次いで撃ち込んだ。5日正午頃のことという。折しも中国で主要20カ国・地域首脳会議が開かれているさなかのこと。中国の面目は丸つぶれである。日中や中韓関係の改善に対するやっかみ、米国への示威行動との見方もあるが、どれも仮説の域を出ない。一体何を考えているのやら。
▼北朝鮮つまり金正恩氏ということだが、その伝えられ方はいつも「~との観測もある」「~かもしれない」とあやふやだ。材料が極端に少ないため、仮説が検証されないまま独り歩きするのである。そうして恐怖心ばかりが肥大していく。駅に置かれた不審な紙袋のようなものだ。毒物や爆弾が入っていると想像すればうかつに手は出せない。まあ実際に中をのぞいたら、いるのは弱みを見せたくなくて殊更強がっているだけの人間かもしれないが。おっと、また「かもしれない」だ。