▼22世紀から「のび太」君を幸せにするためやってきたネコ型ロボットの「ドラえもん」を知らない人はいないだろう。最近も、リオ五輪の閉会式に遅刻しそうになった安倍(マリオ)晋三首相を、未来のひみつ道具「土管」で一気にブラジルまで運ぶなど大活躍である。生まれたのは2112年のこと。あと100年弱であれだけ便利な道具がそろうのか、この目で見ることはできぬが楽しみなことである。
▼漫画のことはさておき、もし江戸時代の日本人が現代に来たら、やはり「ドラえもん」の道具を見たときのように驚くのではないか。国立科学博物館が6日発表した未来技術遺産の本年度登録分を、そう思いながら眺めていた。この遺産は世界的に見て特筆すべき発明や開発品を、国民の財産として記録保存していく取り組みだそう。派手さはないが、製作当時の日本で文字通り未来を切り開いた技術ばかりである。江戸時代なら「ドラえもん」ポケットからしか出てこなかったろう。
▼今回は「ユンボ」の商品名が製品の代名詞にまでなった国産初の油圧ショベル「Y35」(新三菱重工・当時)も登録されていた。61年に初めて出荷され、「戦後日本の国土開発に顕著な貢献を果たした」ものだ。30年以上前の話になるが、駆け出し記者のころ現場に行くと、違うメーカーの油圧ショベルも全て「ユンボ」と説明されるので戸惑ったことを覚えている。それだけ普及していたのだろう。さて普及といえば世界に知らぬ人のない「ドラえもん」である。登録もそろそろか。