▼古代遺跡を発掘し、残されていた文字を苦労して解読してみると、「最近の若い者はまるでなっとらん」と書かれていた、というのは有名な笑い話である。いつの時代も年寄りと若者の間には深い川が流れているということか。年寄りも昔は若者だったはずなのだが。以前、第一生命のサラリーマン川柳でこんな作品を読んだ。「OA化結局なじめずOB化」(老兵)。やはり川を渡る時期はあるとみえる。
▼一方、2015年度の現代学生百人一首(東洋大学)では、「八人の思いをのせたロボットがその手を伸ばす夢を掴みに」(八戸工高3年 荒瀬将文)の作品を目にした。当時は夢物語だった鉄腕アトムのようなロボットが、もはや身近な存在なのだろう。現代の若者はインターネットやスマホもやすやすと使いこなす。そんな彼らの姿を横目で見ながら「最近の若者は」と批判し、殊更世代間の断絶を強調するのは無益なことだ。むしろ若者が力を発揮できる場を用意した方がいい。
▼政府が12日、GDP600兆円の目標を実現するため、「未来投資会議」の初会合を開いたと聞き、未来への投資とはつまり、子どもや若者のための投資だろうと考えた次第。柱の一つはIoTやロボット技術、人工知能を産業に活用していく「第4次産業革命」だそうだ。若者の得意分野で雇用の受け皿が増えれば、今の賃金格差や不安定な就労状況も改善されよう。会議成功の暁には若者が、遺跡ならぬWebに「最近の年寄りは超クール」と文字を打ち込んでいるかもしれない。