▼小さな雪玉を雪山の上から転がすとどんどん大きくなる。雪だるまを作るときにも使う方法だから、北国の住人なら誰でも経験のあることだろう。借金が知らぬ間に膨らんでいくことの例えとして、「雪だるま式に」との形容もあるくらいだ。このところの東京で次々起こる劇場型の出来事をはたから見ていると、そんな雪だるまが巨大になり、手が付けられなくなっていく風景が浮かんできて仕方がない。
▼まずは東京五輪の施設群である。とりわけ新国立競技場の選考は大もめにもめ、ついには選考自体を白紙にしてやり直した。ことしに入ると舛添要一前都知事が公私混同疑惑で辞職に追い込まれ、都知事選が行われることに。途中、「都議会のドン」なる人物も登場して観客をざわつかせたが、最後に都民の心をつかんだのは小池百合子氏だった。どれもこれもお祭りのような騒ぎ。やれやれこれで幕引きかと思いきや、今度は築地市場の豊洲移転で新たな地下空間問題が噴き出した。
▼どうやら東京都政劇場には終幕というものがないらしい。全国ネットのワイドショーや報道番組は連日、新市場地下に盛り土がないことを鬼の首でも取ったように伝えている。このドタバタを外から眺め、都民の皆さん少し勢いがつき過ぎてやしませんか、と眉をひそめている人も多いのでは。聞くと都の対応が稚拙なのは事実だが、新市場が機能・安全面で要求性能を満たしているか調べてから騒いでも遅くはなかったろう。まあ、雪だるまを作るのが好きな人たちに何を言っても。