▼とっぴな発想に笑いたくなるが、妙に考えさせられもする研究に贈られるイグ・ノーベル賞の受賞者がことしも決まった。日本人では、東山篤規立命館大教授と足立浩平大阪大教授の2人が「知覚賞」に輝いている。上体を前に倒し、股の間から後ろを見ると視覚が変化することを証明したという。「股のぞき効果」というらしい。思わず「で、それが何か」と言いたくなるが、そこがこの賞のいいところ。
▼「それでも地球は回っている」と叫ぶ変わり者がいないと、世の中は進歩しない。それに、誰も目を向けないところに興味を持ち、精力的に研究するなんて素敵ではないか。股のぞきといえば京都の天橋立を眺める古くからの習慣が思い浮かぶ。長く続いてきた裏には視覚の変化という娯楽性があったわけだ。地球が回るほどのことでもないが、理由を知れば面白い。すぐ何か役立つこともなさそうだが、そのうちノーベル賞の大村智教授の微生物研究のように大化けするかもしれぬ。
▼このイグ・ノーベル賞、驚いたことに日本人が2007年から10年連続して受賞しているらしい。日本の研究者といえば真面目な印象だが、案外ユーモア感覚が優れているのか。多分そうではなく、真面目が高じていわゆる「オタク」になっているのだろう。それはそれで日本らしいが。ちなみに昨年は、バナナの皮がなぜあれほど滑るのかの研究で物理学賞を受賞したそうだ。最近、日本銀行の金融政策も滑りがちである。来年はこの謎の解明で経済学賞を受賞したりは、しないか。