▼今月初めのこと。車を運転しながら何となくラジオを聞いていると、安倍晋三首相の動向を伝えるニュースが耳に入ってきた。「安倍首相は明日、羅臼を訪問する予定です」。これには驚いた。その日、首相は中国にいて、前の日はロシアでプーチン大統領と会談。それであしたが羅臼とは、何と忙しいことか―。ところがよく聞いてみると羅臼でなくラオスの勘違い。ASEAN首脳会議への出席だった。
▼自分のそこつさを棚に上げるつもりはないのだが、そんな聞き間違いをしてもおかしくないくらい、首相は国内外を飛び回っている。実際、14日には一連の台風被害を視察するため本道にも来ていた。第二次、三次内閣での訪問国・地域数は今月とうとう、延べにして100を超えたそうだ(外務省まとめ)。さらに、18日からは第71回国連総会出席で米国に向かい、その足で日本の首相として初めてキューバを訪問した。在任期間が長いこともあり着々と外交成果を積み上げている。
▼安倍首相の背中には羽でも生えているのではないか。もっとも、その羽もしばらくは封印である。きのう、秋の臨時国会が始まった。アベノミクスの加速、二次補正予算、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認と重要課題が目白押しだ。今度は国会に腰を据え、日本経済の再生に取り組むことになる。所信表明演説では「未来」と「世界一」の言葉を何度も繰り返し、国民に、共に挑戦することを呼び掛けていた。さて、お手並み拝見である。そろそろ日本経済にも羽が生えていい。