時代劇ファンなら、『暴れん坊将軍』(テレビ朝日)を知らぬ人はいないだろう。8代将軍吉宗が身分を隠して市井に下り、江戸にはびこる悪を征伐する物語である
▼仕事の不満やイライラも、主役松平健の刀が毎度吹き飛ばしてくれたものだ。もっとも当時は、お忍びにせよ将軍が単身で外を出歩くことなど考えられなかったそうだ。ただ、実際、華美な着物や美食を嫌い、狩りに出ては銃の台尻でイノシシを打ち倒す型破りな人物であったらしい。幕政に大なたを振るう「享保の改革」を断行できたのも、そんな豪快な性格故だろう。改革は吉宗が就任した1716年に始まった。ちょうど300年前である。元禄以降の浪費で財政はひっ迫し、市中経済も停滞していたという
▼おや、そんな経済状況、どこかで聞いたなと思ったら現代と同じではないか。吉宗が取り組んだのは新田開発や足高の制、目安箱、倹約。今に置き換えるとそれぞれ産業振興・雇用創出、人材育成投資、国政参加手段の多様化、財政規律見直しとなろうか。安倍政権が進める経済改革、アベノミクスと方向性は一緒である。いつの時代も打てる手にはそう変わりがないということだろう。肝心なのは現状を正しく分析し、成長につながる改革メニューを政策に織り込んでいけるかどうかである
▼ところで「享保」と並べるのも気が引けるが、ご覧の通り本紙もきょう付から紙面改革を実施している。小欄は「きょうの紙面」下に引っ越した。しばらく目に慣れぬことで恐縮だが、こちらの改革にもお付き合い願いたい。