日本MS学会が札幌で全国大会 団地再生の可能性探る

2018年05月22日 13時00分

 マンションの諸問題を学術的に研究する日本マンション学会の全国大会が、18日から20日にかけて、札幌市内の北大工学部で開かれた。

日本マンション学会全国大会の様子

シンポジウムとパネル討論で団地活用の可能性を探った

「郊外型高経年団地の再生とストック活用」と題した19日のメインシンポジウムで、国土技術政策総合研究所の長谷川洋住宅性能研究官が団地再生に必要な行政法の課題について、千葉大の丁志映助教がシェアハウスへの可能性をそれぞれ解説。多様な団地活用に対応した権利変換や、ストック活用の仕組みづくりの重要性を説いた。

 同学会は、都市計画学や建築学の研究者をはじめ、マンション管理士・宅建主任者などの実務者、行政担当者、管理組合などが参加し、1992年に設立。理論と実務の両面からマンション問題の研究を続けている。

 北海道大会でメインシンポジウムの題材とした大規模な郊外型高経年団地は、居住者の高齢化や、マンション市場での事業化の厳しさなどの課題があるほか、改修や建て替えへの合意形成の難しさが再生や利活用を阻んでいる。

 趣旨説明で明治学院大の大野武教授は「市場に任せていても更新可能な物件と、公共や民間などから何らかの支援がなければ再生できない物件との間に、多くの郊外型団地が存在する」と指摘。ハード・ソフト両面からの支援策の必要性を唱えた。

 行政法の課題について長谷川氏は「一括建て替えによらない多様な再生が可能になるような制度を考えなければいけない」と主張した。建て替えや修繕、現状利用のほか、土地の一部売却で商業施設を入居させるなど「ニーズに応じた複合的な計画を団地管理組合が決定できるようにすることで、団地再生は進みやすくなる」と解説。従来の等価原則に基づかず、区分所有者の希望に応じて柔軟に対応できる権利変換の仕組みが必要になるとした。

 また、地域内で防災や高齢者・子育て世代の支援などの機能を持たせた〝地域貢献型団地再生〟を提案。「周辺地域を含めた居住環境の問題解決の場と捉え、再生を通じて団地を地域の拠点にするような手法が必要」と説いた。

 丁氏は、国内で増加するシェアハウスの活用を提案した。空間だけでなく、情報や物、コミュニティーの共有を求める〝シェアコミュニティ志向〟が若者を中心に拡大。団地内の空き住戸などをリノベーションした〝団地型シェアハウス〟も増加している。

 これらを踏まえて、若者や子育て世帯のシェアハウスと、見守りが必要な高齢者や一人親家庭向けのシェアハウスなどを組み合わせた〝シェアスタイルタウン〟の形成を提案。団地の共助を受けながら、世代やライフスタイルを超えて住み続けられる利点を挙げ、「地域を巻き込んだシェアスタイルタウンまで広げなければ。団地だけでは生き残れない」と主張した。

 続けて、明海大の周藤利一教授らも交えてパネル討論をした。会場からは、コミュニティー形成の必要性や区分所有ならではの団地活用策について意見が出た。

 大阪市立大の梶浦恒男名誉教授が「管理組合が長年取り組んできた検討・工夫をより発掘し、住民の努力で変えていけると刺激することも大事」と総括した。


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