組織というものは時に、所属する者たちも大して自覚せぬまま道を踏み外すことがあるらしい
▼いちいち会社名を挙げることはしないが、最近だけでも自動車業界では無資格検査員による検査の横行や燃費試験データのごまかし、鉄鋼業界では品質検査データの改ざんが立て続けに起こった。少し記憶をさかのぼれば、消費期限を書き換える食品偽装事件を幾つも思い出す。銀行では不正融資が話題になったばかりだ。コスト削減、人手不足への対応、売り上げ至上主義など事情はいろいろあろう。ただ、不正を働く会社に決まって見られるのは組織の論理が消費者利益や法律、一般常識より優先されること。結果として個人の感覚がまひし、悪い事を悪いとも思わなくなってしまう
▼今盛んに騒がれている日本大学アメリカンフットボール部の危険プレー問題も根は同じでないか。今月6日の関西学院大との試合で日大の選手がルール無視の乱暴なタックルを仕掛け、相手選手に大けがをさせてしまった件である。関学大の猛抗議に対し日大の内田正人監督は当初、勝つためにはあれくらい当然との態度だったと伝えられる。事実、チームには反則した選手を褒める雰囲気があった。目的のためには手段を選ばぬ意識が貫徹していたとしか思えない
▼19日になって内田監督は責任を認め相手選手に謝罪。監督辞任も表明した。ところが指示の有無についてはだんまりのままだ。負傷選手はきのうまでに被害届を提出した。組織論理にこだわって道を踏み外した日大は、警察でも独自の主張を展開するのだろうか。