譲位のあり方

2016年10月21日 09時40分

 言葉の使い方というのはなかなか難しい。明らかな誤りの場合は別にしても、何げない言い回しが時に人の心を深く傷つけることがある

 ▼例えば重い病気で床に伏せっている友人を見舞い、元気づけるため「大丈夫だからね」と声を掛けることがあるだろう。その言葉を聞いた友人は、「そうか自分はやっぱり大丈夫じゃないんだ」と気落ちするかもしれない。隠そうとしても、真意は伝わってしまうものなのである。皇后さまもそうだったようだ。きのう82歳の誕生日を迎えられたのを機に、報道で「生前退位」との言葉に接したときの印象を明かされた。宮内庁記者会の質問に、文書で回答されたそうだ。そこには、「一瞬驚きと共に痛みを覚えた」と記されていたとのこと

 ▼「生前」には「死」の内意が込められているのだから、繊細な言語感覚を持つ皇后さまがそれに気付かないわけがない。皇后さまでなくとも、「生前退位」の語の響きに違和感を覚え、心ない言葉と思った人も少なくないのではないか。「この年の事無く明けて大君の相撲の席に在せるうれしさ」。天皇陛下が健康で世に変事もなく、いつも通り初場所に来られた喜びを詠んだ2006年の皇后さまの歌だ。常に陛下を気に掛けているのだろう。連日聞く人格を無視するかのような「生前退位」の言葉に悲しみを感じていたとしてもおかしくない

 ▼両陛下は即位以来、人間としての象徴の活動がどうあるべきか模索してきた。国民の理解も深まっている。政治家や官僚は後れをとっていないか。言葉一つにもそれは表れる。


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