つい先日小欄で取り上げたばかりだが、きょうも日本大学アメリカンフットボール部の不祥事について書かせてもらいたい
▼関西学院大の選手にけがを負わせた日大の宮川泰介選手がおととい、個人の立場で記者会見を開いたのである。試合で反則するに至るまでの監督やコーチとのやりとりやその間の背景をつぶさに語り、自分の非を認めて潔く謝罪した。見ていて胸が苦しくなったのは筆者だけではなかったろう。弱冠20歳である。そんな前途ある若者に「もうアメフトをする権利はない」と言わせるまで追い込んだのは誰だったのか。彼は監督やコーチから相手選手を負傷させるよう指示されたと明言した。秋の大会にその選手が出られなければこちらの得、とまで強調されたのでは誤解の生まれる余地もない
▼試合の少し前に実戦練習から外された上に日本代表を辞退させられ、弱気だなどと性格も繰り返し攻撃されていたという。「相手選手をつぶせ」との指示を拒否できる精神状態になかったのである。「責任は自分に」としながら指示したことは認めない内田正人前監督の不遜な態度により、宮川選手は異常な組織論理の犠牲にされそうな自分に気付いたのだろう。過ちは消えないものの22日の会見を見る限り、宮川選手は思慮深く誠実な人との印象を受けた
▼日大広報部は同日夜、すぐさま「つぶせは強く当たれとの意味で指示は誤解」との声明を発表した。熟慮なき反論。そこからは大学の誇りも学生を守る気概も感じられない。ただ一人勇気を奮いフィールドに立った選手にこの仕打ちとは。