高齢運転者の決断

2016年11月15日 10時00分

 現代日本風に言うなら「レジェンド」だろう。米国作家ダニエル・フリードマン著『もう年はとれない』(創元推理文庫)の主人公は、メンフィス署殺人課で数々の伝説を作った元刑事である

 ▼名前はバック・シャッツ。主人公としては異色の87歳という高齢だが、気力体力の衰えに悩まされながらも、昔と変わらず巻き込まれた事件には敢然と立ち向かっていく。武器は持ち前のタフな精神力と、痛烈な皮肉である。あくまでも自分の意志を貫く硬骨漢というわけ。ただ、そんな無頼派のバックでも車の運転だけは控えているらしい。友人の見舞いに病院まで行かねばならない場面で、運転しない理由をこう語っている。「なにがどこにあってどうつながっているのかを思い出すのが年々困難になってきて、世界という円は自宅を中心にだんだんと縮みつつある」

 ▼加齢の影響で安全運転が難しくなっていると自覚しているのだ。誰もがこんな風に自分の能力を正確に把握し、自制することができればいいのだが。最近、高齢運転者による悲惨な死亡交通事故が相次ぐ。10月28日に87歳男性の軽トラックが小学生の列に突っ込んだのをはじめ、今月10日には84歳男性が自治医大で、また12日には83歳女性が国立病院機構で暴走して人をはねた

 ▼警視庁の統計によると高齢運転者の事故は全国的に増加の一途なのだとか。長い人生、誰もが「レジェンド」の一つや二つ持っていよう。しかし最後に人をあやめてしまえばそれも台無しだ。いつかきっぱり運転はやめる。その勇気だけは早くから温めておきたい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 北海道水替事業協同組合
  • 東宏
  • 川崎建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,483)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,312)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,191)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,099)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (857)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。