越後国を統一した戦国武将上杉謙信に言葉がある。「我は兵を以て戦ひを決せん。塩を以て敵を屈せしむる事をせじ」。武田信玄の領国が塩不足で苦しんでいるのを知り、敵方にも関わらず塩を送って助けたときに語ったことという
▼よく使われる「敵に塩を送る」の元となった逸話である。相手を弱らせてから攻めるような姑息(こそく)な策略を嫌い、いつも正々堂々、真っ向勝負を貫き通した名将謙信らしい。その謙信と肩を並べるとまで褒めるつもりはないが、おととい、1年半ぶりに行われた党首討論での玉木雄一郎国民民主党共同代表の正々堂々とした戦いぶりには大いに見るべきところがあった
▼安倍首相を困惑させることはできても多くの国民には関係のない「モリカケ問題」はあえて避け、現下の重要課題である外交にテーマを絞ってきた。政権攻撃でなく、国の基本政策に視点を移したのは責任政党を意識してのことだろう。他の党がモリカケに終始する中で玉木氏の討論はひときわ映えた。失礼ながら選挙互助会のような設立経緯から国民民主には注目する気も起きずにいた。ところがである。玉木氏は日ロ交渉について、共同経済活動ばかり先行し領土返還が進展していない点を指摘。日米貿易問題では、同盟国でも首相はトランプ氏に「言うべきことは言わなければ」と強く行動を求めた
▼国会は本来、こうして建設的な議論を重ねながら国政を前へ進めていく場である。国民が期待しているのも姑息なだまし討ちや兵糧攻めなどでなく、与野党が知恵で真っ向勝負することだろう。