子どもたちのみずみずしい気持ちが記された詩集『ことばのしっぽ』(読売新聞生活部監修、中央公論新社)に、「おとうさん」と題されたこんな詩があった
▼「うちのおとうさんてさ みおとあそんでいるときは おっちょこちょいで ふざけてるのに みおがびょうきのときは しんけんになるの どうしてかな」。のむらみおさん(5歳・当時)の作品である。どうしてって、大切で大切で仕方がないから、だ。同じ5歳で理不尽に命を奪われた結愛(ゆあ)ちゃんの両親への問い掛けは、信頼と愛情に満ちた「どうしてかな」ではなかった。きっと恐怖と悲しみに震えながら絞り出すように願いを書いたのだろう。「ゆるしてください」だった
▼東京都目黒区でことし3月、結愛ちゃんが虐待を受け死亡した事件で、6日に父親の船戸雄大被告と母親の優里容疑者が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。食事を十分に与えず、殴ったり冷水を浴びせたり、真冬にベランダで放置することまであったという。どれだけつらかったか。結愛ちゃんの使っていたノートが見つかっている。記されていたのが「もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっともっと あしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください」。胸が詰まる
▼船戸被告は「しつけのため」と述べているらしい。卑劣である。なら人として一番なっていない自分を殴り、真冬のベランダに立たせればよかったのだ。救えた命だったろうに。今はただ冥福を祈ることしかできない。