江戸時代に幕府や店の主人から下の者へ下された衣服を「お仕着せ」と呼んだ。もともと悪い意味ではなかったものの、長く使われているうち、実態を無視して一律にやらされることへの不満を表す言葉に転じたらしい
▼「あんなお仕着せの方法論がどの現場でも通用すると思ったら大間違いだ」は現場で最前線に立つ人からよく出る愚痴。上から与えられたものであるため使わないわけにはいかないから始末が悪い。国の制度でもしばしばこの「お仕着せ」による不具合が起こる。道路構造令は典型だろう。今でこそ主に運用面で改善が進んでいるものの、以前は画一的規定が地域の実情に合わず、整備を遅らせ経費を増大させる原因となっていた
▼最近では本紙でも取り上げることが増えた週休2日制もそうでないか。先進国の中でも労働時間が長く余暇が少ない日本の現状を変えるための政策である。その趣旨やよし。なのだが、地域や産業により多種多様な働き方があるため一律に適用するのは簡単でない。特に建設分野は現場環境、天気、工期、単価など多くの制約要因があるのに導入は一律。公共でモデル工事も試行しているとはいえ、現実には工夫で何とかなるほど楽なものではなさそうだ。本道では冬場の稼働率が低いこともあり、週休2日だと手取りは確実に減る
▼とはいえ休みも少ない業界では若者にそっぽを向かれよう。それでは未来がない。「前門の虎後門の狼」だがいずれにせよ「お仕着せ」は今の体に合っていない。工期も単価も窮屈過ぎる。現実を反映する柔軟な仕組みがほしい。