新しい年が来た、と誰もが何の疑問もなく受け入れているが、この年というもの、長年付き合っていてもどうにもつかみどころがない
▼星新一もそうだったとみえて、エッセイ『きまぐれ星のメモ』(角川文庫)では、まず100年間がどんな長さなのか実感することから始めていた。「地球ができてから今までの時間を東京タワーの高さであらわすと」、100年間は「一枚の切手の厚みに相当する」といった具合。つまり1年間というのは、地球の歴史と比べると1枚の切手の100分の1の厚みしかないというわけ。いやはや想像すると何とも心細い。一方で星氏はこうも言っている。この最新の切手には、「過去のどの時代ともくらべようのないほどの重大さが、ぎっしりとつまっている」
▼それもそのはず。電話やテレビ、コンピューターがちまたにあふれ、自動車や飛行機が普及し、人類が宇宙への進出を果たしたのは、ここ100年の話なのである。こんな急激な変化は地球の歴史上かつてなかった。そんな時代の今である。ことしも切手100分の1には収まり切らないほどの出来事があるに違いない。トランプ米大統領誕生、反グローバリズムの激化、民族主義の台頭…。既存の秩序を押し破り、波乱の芽は伸びつつある
▼日本とて無縁ではいられまい。星氏はこぼしていた。「東京タワーの高さほどの過去を持ちながら、切手の厚さ以下の未来を予測しようにも、方程式の作りようがない」。さあ、2017年。新たな方程式を作って未来を手に入れるのはどこの国の誰になるのか。