できることなら昔に戻ってやり直したい。誰もが一度は空想することではないか。ホラー作家スティーヴン・キングは『11/22/63』(文藝春秋)でそれを描いて見せた
▼過去へつながる穴を知った主人公の男が1963年に起こったケネディ米大統領暗殺を阻止しようとする物語である。男は未来の知識を駆使して目的に迫るが、改変されまいとする歴史も次々と邪魔に入る。苦難の末、犯行現場に到着した男は…。結末を書くのは控えるが、キングはいわゆる時間のパラドックスを描いていた。つまり過去に手を加えると未来を大きく変えることになってしまうのである
▼面白い小説だが、これが現実となると厄介なこと極まりない。というのも、韓国がまた反日という過去へつながる穴に入り込もうとしているのである。どうやら1年前の慰安婦問題をめぐる日韓合意をなかったことにしたいらしい。次期大統領選の候補者はそろって合意への批判を始めた。国家間の正式な約束だったにもかかわらずである。とはいえこの韓国の動きには、驚くというより、やはりそうなったかと冷静に受け止めた人が多かったのでないか。当事者能力を失った韓国政府、日本総領事館前など増える「少女像」、抗議で大使を帰国させる日本政府、憤慨して反日気運を高める韓国民
▼どうやら韓国は周期的に昔に戻ってやり直したくなるらしいのだが、日本にしてみればいささか食傷気味である。キングは作品で、過去にこだわるだけでは幸せな未来が開けないと伝えていた。韓国もキングに学んでみてはどうか。