家屋の敵といえば地震、火事から始まって湿気、経年劣化といろいろあるが、シロアリを思い浮かべる人も中にはいるのでないか。構造材を食い荒らし木造住宅の寿命を縮めてしまう怖いやつである
▼家の中で一匹見掛けたとすると、万単位の個体がどこかに隠れている可能性があるらしい。気付いたときには既に、見えない所に大きなシロアリ社会が出来上がっていてせっせと破壊工作にいそしんでいるというわけ。官僚をそのシロアリに例えて批判する論法がひところはやった。一面的な見方のようでこれまでは少々違和感も覚えていたが、今回の場合はまさにその表現がぴったりと言うほかない。文部科学省の天下り問題のことである
▼松野文科相が6日に公表した内部調査経過報告によると、天下りのあっせんを安定して継続させるため、同省主導で新たな一般社団法人まで設立していたという。その費用の一部は補助金を受けている他の関連団体が出していたそうだ。なかなか巧妙な仕組みを考えたもの。シロアリたちは2009年の天下り規制強化をきっかけに、隠れて着々と巣を作り続けていたようだ。再就職自体は悪いことではない。ただ天下りは退職金渡り鳥を生み、民間を締め付ける道具にもなる。だからこそ規制法ができたのだろう
▼きのうの国会で、あっせんしていた法人は解散するとの答弁もあったが、それで文科省の組織的な法令違反が白紙に戻るわけではない。家全体に広がったシロアリを駆除するのは難しいというから、文科省も一度解体するくらいの覚悟が必要だろう。