台風、地震、火山噴火。それによって引き起こされる水害、津波、土石流。積雪地域であれば豪雪も心配せねばならぬ。あらためて言うまでもないが、日本は実に自然災害が多い国である
▼日本人にとっては当たり前のこと。ただし、他国が同じ状況でないのもご存じの通り。内閣府の防災白書によると、国土面積が世界の0.28%にすぎない日本に、全世界の災害で発生する被害額の17.5%が集中しているそうだ。日本では誰がいつ被災者になってもおかしくない。水害で逃げ場を失った、地震で孤立した集落に取り残された…。そんなとき頼りになるのが自衛隊、警察、消防などが組織する救助隊である
▼災害が起きるたびに危険をものともせず、救助に赴く隊員の姿をテレビや新聞で見て心強く思ってきた。それだけに今回の事故は余計痛ましい。長野県の鉢伏山付近で起きた県防災ヘリコプター「アルプス」墜落のことである。6日までに、搭乗していた操縦士と消防隊員ら9人全員の死亡が確認された。事故はつり上げ救助訓練のために高原の臨時ヘリポートに向かっている途中で起きたらしい。訓練に参加していた7人の消防隊員は県内各消防から選ばれた精鋭だったそうだ。操縦士は東日本大震災にも出動した経験のある大ベテラン、整備士も確かな技術と経験を持つ職員だったとのこと
▼原因の解明は調査を待つしかないが、こんな悲劇は2度と繰り返してほしくない。多くの人を救いたいとの志を持った隊員たちが思わぬ事故で命を落とす。彼らにとってこれほど無念なこともなかろう。