子どものころから「ザ・ドリフターズ」(ドリフ)を見て育ってきたせいか越後屋と聞くと悪代官がすぐ目に浮かぶ。そんな人、案外多いのでないか
▼志村けん扮(ふん)する悪代官に越後屋役の加藤茶が意味ありげに菓子折りを差し出す。悪代官はにやりと笑い「お前もワルよのう」。ふたを開けてみると中身は本当に菓子。裏返しても小判は出てこない。越後屋が自信満々に言う。「甘いものがお好きだそうで」。「たわけ者めが!」。悪代官が怒りだす、という流れである。当時、いわゆるゴールデンタイムのテレビ時代劇は勧善懲悪ものが主流。ドリフはその裏取引の部分を面白おかしく取り上げていたのである
▼このニュースを聞きまず思い浮かんだのが本家時代劇でなくドリフのコントだった。現役の文部科学省科学技術・学術政策局長が受託収賄容疑で逮捕された事件である。佐野太容疑者は息子を東京医大に合格させてもらう見返りとして、私大支援事業に同大が選ばれるよう便宜を図ったという。まさに絵に描いたような裏取引である。菓子折りにはお金でなく佐野容疑者の一番欲しかったものが入れられていたわけだ。しかも大学側に供与した支援は自分のでなく、文科省の懐から出した。事実とすればあまりにばかばかしい話だがコントと違って少しも笑えない
▼文科省は昨年も組織的な天下りが明らかになり関係者が処分されたばかり。こちらも補助や助成を交換条件にしたいわば裏取引だろう。文科省には悪代官しかいないのか。庶民の側から一言申し上げたい。「たわけ者めが!」。