日本の科学力が失速

2017年03月30日 09時34分

 明治・大正期に活躍した詩人の山村暮鳥は、「赤い林檎」という短い詩を書いている。「林檎をしみじみみていると だんだん自分も林檎になる」。見ているうち、物体にまで感情移入をしてしまう。文学者らしい感性ではないか

 ▼ところが同じ学者でも、物理学者だとこうはならない。アイザック・ニュートンはリンゴが落ちるのをしみじみと見て、なぜ下に落ちるのかそればかりが気になって仕方なかったらしい。ご存じ「万有引力の法則」発見のエピソードだが、伝記用にだいぶ脚色された話だろうと今ではいわれている。ただ、微積分法を考案するなど桁外れの知能を持っていたことは間違いない。あす31日は、そのニュートンが没してちょうど290年の命日である

 ▼現代科学を切り開いた立役者の一人だから、「世界で最も有名な科学者は」との問いに真っ先に名前が上がる人物かもしれない。日本でも多くの子どもたちに科学への憧れを抱かせ、科学大国の地位を築くのに大きな役割を果たしてきた。実はその日本の地位が今、危ういという。英学術雑誌「ネイチャー」が最近、「日本の科学研究がこの10年で失速し、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と発表したのである。同誌の調査で、世界の主要な科学誌に掲載される日本の研究論文が大幅に減っていることが分かったそうだ

 ▼大学への交付金カットをはじめとする科学投資の減退が原因という。リンゴも苗を植えねば熟れて落ちては来ぬ。日本の科学行政は今こそ研究者の実態をしみじみと見てみるべきではないか。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 川崎建設
  • web企画
  • 古垣建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,463)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,354)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,212)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,071)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (863)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。