日本の霊長類研究の第一人者で京大総長も務める山極寿一氏は少年時代、児童文学『ドリトル先生』(ヒュー・ロフティング)シリーズが大好きだったそうだ。『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)に教えられた
▼動物語を自在に操って世界を旅するドリトル先生に憧れていたらしい。いつの日か自分も「アフリカに行って動物たちと話をしたい」と考え、探検家になることを夢見ていたという。山極氏のように、子どものころの夢をそのまま実現させられる幸運な人はあまりいない。ただ振り返ってみて、夢が人生を航海していく上で羅針盤の役目を果たしてくれた、と感じている人もまた少なくないのでないか
▼さてことしの新1年生はどんな夢を持っているだろう。あす、本道の多くの公立小学校で入学式が行われる。第一生命が1月に発表した児童の「なりたいもの」調査では1位が男子でサッカー選手、女子で食べ物屋さんだったとのこと。とはいえ、職業だけが夢の全てではない。そもそもまだ夢などなくても一向に困らない。読売新聞家庭面の「こどもの詩」精選集『ことばのしっぽ』(中央公論新社)にこんな詩があった。吉田駿君(小1)作「はっけん!」である。「おひめさま めをぬいたら おひさま/ありんこ りをぬいたら あんこ/にんじん んをぬいたら にじ!/わぉ!」
▼「にんじん」が「にじ」に変わるのを発見し、おまけに心でその虹を見て歓声を上げるなんて畏れ入った。子どもは夢を考える天才である。大人が余計な邪魔をしない限り。