「名月をとってくれろと泣く子かな」一茶。そういえば昔はどこか店に行くたび、子どものわがままに悩まされたと懐かしく思い出す人もいよう。欲しいものを買ってもらえず転げ回って泣きわめく。今でもごくたまに見掛ける場面である
▼子どもには子どもなりの知恵があり、大人を困らせれば目的達成の可能性が高まると分かっているのである。近頃の北朝鮮情勢を見るとそれと同じ場面が頭に浮かんで仕方ない。北朝鮮が5日、再び弾道ミサイルを発射した。雨後のたけのこでもなかろうに、よくまあ次から次へとポンポン出てくるものだ。軍事にばかり予算を使わず民生に充てれば、どれだけ人々の暮らし向きが楽になることか。そう考えると他国のことながら憤りを禁じえない
▼6回目の核実験も近いとの確度の高い分析もあるやに聞く。しかも今回は従来の十数倍の規模という。米中会談をけん制するためとの見方もあるが、国際社会への挑発や自国の孤立化に、もはや歯止めをかける気はなさそうだ。暴君の悪名高いローマ皇帝ネロも若くして就任して5年は善政に努めたらしい。ところが次第に実力不足の地金が現れ、周囲への疑心暗鬼を募らせていったという。金正恩氏も同じではないか。権力の継承からはや5年である
▼危険な火遊びの段階はとうに過ぎ、現実に平和を脅かす存在になりつつある。最近では自信なのか破れかぶれなのか、名月ならぬ米国を取りたいとの野望を隠しもしない。わがままを言って暴れたからとて、よしよしと聞いてくれる大人などもうどこにもいないのだが。