米国のテレビドラマ『スパイ大作戦』が好きで子どものころによく見ていた。原題は「ミッション・インポッシブル」(不可能な任務)。来月6作目が公開となるトム・クルーズ主演の同名映画の元となったドラマである
▼毎回困難な指令が伝えられ、それを綿密な作戦と最先端の技術を駆使して遂行していく。指令伝達時の「なお、このテープは自動的に消滅する」の言葉は当時多くの子どもたちがまねしたものだ。リーダーは指令を聞くとまず任務に最適なメンバーを集め、周到に準備した上で作戦を実行した。不測の事態にも臨機応変に対応。いつも胸のすく思いがしたものだ
▼こちらは現実だが、タイ北部の洞窟から13人の少年らを救出する任務も困難極まるものだった。どう乗り越えるか常に考えていたからだろう。全員が無事生還を果たしたとき、救出を指揮した地元チェンライ県のナロンサク知事は、「これはチーム・タイにとってミッション・ポッシブル(可能な任務)だった」と総括したそうだ。チーム・タイとは自国はもちろん世界中から集まったダイバーの精鋭チーム。雨水流入や酸素濃度低下、少年らの体力減退で時間的猶予のない中、思い切った作戦と万全の用意で一気に救出を成し遂げた。不可能を可能に変えたわけである
▼少年らも持ちこたえた。遭難地点から洞窟出口までは約5㌔。ダイバーと一緒とはいえ、脱出のためには暗い水の中を30分も進まねばならない箇所があったという。洞窟で18日間耐えた後にである。一つの賭けでもあったがドラマでもこううまくはいくまい。