安倍政権の経済政策「アベノミクス」を支持する米国のノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンは、2013年の著書『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書)でこう提言していた
▼「いまこそ世界は日本を必要としている。アメリカ、ヨーロッパ、日本という民主主義国には共通の利害があり、よくコミュニケーションをとって協力し合い、必要なときにはお互いから謙虚に学ばなければならない」。どうやら意外と早く、クルーグマン氏の待ち望んでいた「必要なとき」が訪れたらしい。ただし欧州とだけではあるが…。安倍首相と欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会常任議長らが17日、首相官邸で日本とEUの経済連携協定(EPA)に署名した
▼発効すると人・物・金を関税などの障壁なくやり取りできるようになる。その経済規模はとてつもなく大きい。世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める自由貿易圏が新たに生まれるのである。世界経済の主導権争いは構図が一変しよう。表立っての反応はまだないが、クルーグマン氏の提言とは真逆の道を行くトランプ米大統領は不満に違いない。最近は相手国に高関税を課すなど盛んに貿易摩擦を引き起こしている。この先また何を仕掛けてくるやら
▼一方、国内にも不安はある。特に本道では乳製品が中心だが安い輸入品が増えることによる影響は無視できない。その辺りTPPも含め政府には万全の対策が求められる。その上で公正な貿易の実現とデフレ脱却が共に図られるのなら、欧州との連携はまさに世界の希望となろう。