米国のコラムニスト、マイク・ロイコが以前、ロナルド・レーガン大統領を皮肉る一文を物していたのを覚えている
▼レーガンは当時、軍事に大金を投入する一方で、貧困層への援助は削減する方針を打ち出していた。ロイコはまず「賢明なやりかた」と太鼓判を押す。その上でこう説明するのである。貧困層をさらに困窮させると必ず暴動が増える。それを鎮圧するには軍備の増強が必要に決まっているではないか。ロイコはさらに言葉を重ねる。レーガンが政府予算を策定するに当たっての論理は「クリスタルのごとく明快」。コラムを読んだ読者はきっとニヤリとしただろう。現代風に言えば「ほめ殺し」である。ユーモアを交えた風刺は時に真正面からの批判より力を持つ
▼ただこちらはどうやらそのユーモアをはき違えてしまったようだ。米国のコメディー女優キャシー・グリフィンさんが、トランプ大統領とみられる斬首された血まみれの人形の頭を持った動画を公開し、非難が殺到している件である。欧米のコメディーで際どい政治風刺は定番だが、これは悪趣味すぎて笑えない。「IS」の処刑映像を思い出した人もいよう。英国などでテロが続く昨今である
▼ロイコはコラムの締めに「他のどんな手段をもってしても果たせなかったことを、レーガンの福祉改革はやり遂げようとしている」と書いた。貧困者が死ぬから問題もなくなるとの毒舌だ。グリフィンさんもロシア人の格好でこう言うべきだったのでないか。「パリ協定脱退のおかげでこれからはシベリアでも暖かく暮らせます」。