若い人にはなじみがないのかもしれないが、年配の方なら「グリーンスリーブス」の曲をよくご存じなのではないか。題名にピンとこなくても、聞けば「ああ、これか」とすぐに思い出すに違いない
▼内容は別れてしまった緑の袖の女性への未練を歌ったもの。私は長いことあなたを愛していたのに、あなたは私を投げ捨てた。そばにいるだけで満ち足りていたのに、とこんな調子。哀感漂うイングランド民謡である。英国のメイ首相も今頃、「あなた方国民は私を投げ捨てた」とため息をつきながら、そんな自国の民謡を口ずさんでいるかもしれない。圧倒的支持を受けて就任してまだ1年もたっていないのに、急速に求心力を失っているのである
▼EU離脱を問う国民投票から一定の時間が過ぎ、どうやら国民の頭も少し冷えてきたらしい。メイ首相の強硬路線、いわゆる「ハード・ブレグジット」を警戒する穏健派が台頭しているのだ。その結果が、先週の英下院総選挙での与党・保守党の過半数割れである。揺れ動く人の心を、長いこと一つにとどめておくのは難しい。メイ首相はそれを実感しているだろう。とはいえ、政治が生き物なのは何も英国に限った話ではない
▼NHKの最新政治意識月例調査によると、6月は安倍内閣を支持する人が減り、しない人が増える結果となった。どちらも2カ月連続である。野党の攻めが功を奏したというより、近頃の内閣の少々高飛車な態度が国民の鼻についたのでないか。国民の気持ちを見誤ると、安倍首相まで「グリーンスリーブス」を歌う羽目になる。