古来、アイヌ民族は生まれたばかりの赤ちゃんに名前を付けなかったそうだ。かわいい名前を付けると悪い神様に見つかってしまうからだという
▼名前が付くのは8歳ころ。個性や特徴も現れてきて、将来に託す希望を見極めながらの名付けもしやすくなるのだとか。例えば男の子なら「いつも獲物に出会う」を意味するトゥカンコロ、女の子なら「食べる物に不自由しない」を意味するハルコロといった具合である。そこへいくと近年幅を利かすいわゆる「キラキラネーム」などは、個性も希望もあったものではない。語感と響きだけのこと。まあ、文句を言う筋合いのことでもないが。とはいえ、やはり「名は体を表す」方が分かりやすい。人だけでなく国立公園もである
▼13日の環境省中央環境審議会で、阿寒国立公園の名称を「阿寒摩周国立公園」に変更することが決まったそうだ。朗報だろう。これまでは阿寒と摩周両方の努力で成功させてきた事業が、一方の名前だけで語られていたようなものだった。景勝地神ノ子池周辺も区域に加えられたという。この名称変更、今後いろいろと良い効果をもたらすのではないか。その一つがJR北海道単独で維持困難とされる釧網本線の問題である
▼この路線は釧路から行くと釧路湿原、阿寒(現行)両国立公園の内懐を走り、知床国立公園の入り口にいざなう。三つの国立公園を一本のローカル線で楽しめるのはここくらいだろう。個性や特徴を正しく表した「阿寒摩周」になれば認知度も上がる。知恵も試されようが、大きく育つ予感は小さくない。