夏の暑さはこれからが本番だというのに、安倍政権には早くも冷たい秋風が吹き始めているようだ。いや自然の風でなく世間の風のこと
▼共同通信社と読売新聞社がきのう、週末に実施した世論調査の結果を発表したのだが、どちらも内閣支持率が大幅に下落しているのである。共同が前回5月調査比10.5ポイント減の44.9%、読売もやはり12ポイント減の49%というから、内閣をいささか揺さぶるくらいには強い風でないか。改正組織犯罪処罰法成立のため荒業を使ったり、加計学園問題の再調査で焦点となっている文書の実物が見つかったりと、先週は内閣の評価を下げる出来事が相次いだ。石破茂前地方創生相の言を借りれば、国民は「内閣って感じ悪いよね」との印象を持ったのだろう
▼読売はさらに内閣を支持できない理由についても尋ねている。最も多かったのは「首相が信頼できないから」で、48%に上ったそうだ。今回ばかりはさすがの安倍首相も「読売新聞を熟読していただきたい」とは言いにくかろう。倒産寸前の会社を立て直した近藤宣之日本レーザー社長は著書『ありえないレベルで人を大切にしたら23年間連続黒字になった仕組み』(ダイヤモンド社)で、特に留意すべき経営危機の兆候は、社長が「不振の原因を外部環境のせいにする」ことだと指摘していた
▼政治不信もまた同じではないか。安倍首相はこのところ自らの「正しさ」に固執するあまり、うまくいかない理由を外部に求めてばかりいた。おごれる者は久しからず。世間の冷たい風で首相は熱くなった頭を少し冷やすといい。