今の心境は、関ヶ原の戦いで勝ちを収めた東軍の総大将徳川家康と同じではないか。胸中には喜びと安堵(あんど)共にありといったところだろう。小池百合子東京都知事のことである
▼2日の都議選で自身率いる「都民ファーストの会」が旧体制側の西軍ならぬ自民党を打ち破り、大躍進を果たした。定数127のうち「都民ファ」が55、公明含む知事支持勢力全体では過半数を楽々上回る79というから大したもの。それにしても小池知事は今回もなかなかの策士ぶりを見せつけた。短期間で立候補者を多く擁立するのにいわゆる「小池塾」を開いたのもそうだし、告示直前に「築地は守る、豊洲を生かす」とのうたい文句で、決断力と問題解決能力の高さを演出した作戦も見事だった
▼家康張りの古だぬきと言っては失礼かもしれないが、自民党で鍛えられ、大臣としても活躍した経験が存分に生かされているに違いない。また運とはそういうものか稲田防衛相の失言、豊田議員の暴言といった敵失も相次いだ。今都議選が自民党都連のお手盛り体質からの脱却を目指していたことを考えれば、「都民ファ」の議席のうち39が新人、18が女性というのは新風を期待するに十分。まあ大コケする危険もあるが
▼ただ気になるのは外野の動き。自民党大敗を錦の御旗に安倍政権を打倒しようとの動きが出始めているがいかがなものか。政権には緩みやおごりがあり批判を受けるのも当然だが、国民が都民に政権選択を依頼したわけではない。都議選は天下分け目でなく、都下分け目の戦いにすぎないのである。