50年ほど前の話である。祖母が山を買ったというので、親族皆タケノコ採りをすることになり、小学生だった筆者も付いて行った。裏山に毛の生えたくらいのさほど大きくもない山だったが、タケノコは豊富にあったと記憶している
▼ところが大収穫に満足して帰ってきてから、祖母の言葉に皆驚かされた。山の図面を見ながらこう言ったのである。「うちの山は隣だったみたいだわ」。昔のことゆえお許し願いたい。祖母は既に亡くなり、その後、山がどうなったかは親族誰も知らないそうだ。「売ってしまったといつだか聞いた気もするが」程度。もともと高い買い物でもなかったらしい。持ち主不明の土地の総面積が九州より広い約410万haもあることが分かったとの報に触れ、そのことを思い出した
▼狭い日本にこれほど素性知れずの土地があるとは信じ難いが事実だそう。所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)が先頃、国交省の地籍調査から計算した結果、そんな推計が出たのだとか。相続登記が行われていない例が多いようで、背景には土地の資産価値減少があるという。大した価値もないのに管理費や税金はかかるとなれば知らぬふりをしたくもなろう。祖母の山も今頃、「九州」の一部になっているかもしれぬ
▼札幌国税局がおととい発表した路線価で、ニセコ地区が3年連続して全国一の伸び率になったそうだ。最近は中国系の投資家が土地取得に積極的らしい。人気が上がるのもいいが、将来持ち主不明の土地があふれることにならないか、気になるところではある。